The Dragon Scroll

Be just and fear not.

なぜ、5回もシンゴジラを観るのか。

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この夏は、シンゴジラを5回みました。

なぜ、5回も同じ映画を見たのか、そしてこれからも見ようとしているのか、正直なところまだ良く分かっていません。観るたびに何かを思う。何かを思いつきそうな限り、足を運ぶんじゃないかと思います。

5回の内訳は、以下のとおり。

1度目、辻堂の109シネマズ湘南で、IMAX

2度目、川崎のTOHOシネマズで、4DX。

3度目、飛んで名古屋茶屋のイオンモールで、ULTIRA。

4度目、立川のシネマシティで、極上爆音上映。

5度目、横浜ブルグで、帰ってきたIMAX

 

年間通じて、あまりシアターで映画をみることはないので、最初にふらっと入った映画館がたまたまIMAXなだけでした。後から気づくことになるのですが、IMAX素晴らしいですね。大スクリーンとクリアサウンド。確かに音が違うと素人でも分かる。

IMAX上映が終わってしたために選んだULTIRAも良かったし、極上爆音上映は至高。わざわざ立川まで泊まりがけで見に行った甲斐がありました。日本語字幕がこんなにも助けになる"日本映画"があるものだろうかという。映画館なんて、どこも同じなんでしょとは、素人の浅はかさでした。良い勉強になりました。なお、辻堂(鎌倉近隣)、川崎、立川と本作に関係の深い場所を選んでいるのは意識的です。

 

さて、冒頭のとおりすっかり惹きつけられてしまったわけですが、最初にあったのは違和感でした。1度目を見終えると、何か得体のしれない違和感に自分が満たされている。この違和感が何なのか、受け止め、理解するのにしばらく時間を要しました。ファンタジーでしかない物語(だって、ゴジラだよ、ゴジラ)を観に行ったにも関わらず、何か生々しいリアリティを感じ取っているというギャップ。

どう観ても東日本大震災津波と原子炉を思い出させるシーンが、ファンタジーの"お話"の向こう側から、自分の中にある記憶を捉えにきて、激しく揺さぶり、思い起こさせる。あまりにもあからさまに、あまりにも真正面に、つきつけられるだけに揺さぶりも大きい。

私は、物語にそんな強烈な力があるとは思ってもいなかった。良いお話、制作物は世の中に溢れている。ただ、こちらにずかずかと踏み込んできて居座り続けるようなものは、そうはない。その強烈さに、恐れと紙一重の興奮を覚え、引き込まれるがままに引き込まれていった。いまもなおだ。

そう、私を虜にしたのは「制作物がここまで人を揺さぶり、惹きつけることができる」という事実への好奇心であった。作り手は、恐ろしく観る者のことを考えている。出演者全員が早口で、場面の切り替えも早くて、専門用語がばんばん飛び出して、忙しないことこの上ない映画のどこが、観る者のことを考えているというのか?

早口ゆえにテンポが恐ろしく良くて、聞き逃したくないと思わせる。場面の切り替えの速さも、飽きさせない。専門用語は印象に残り続ける。使われる言葉自体が練られている。結果として、否応なしに惹きつけられている自分がいる。庵野監督にとっては昔から取ってきた演出でしかないのだけど、悔しいことに、20年も経っても、抗うことができない。

恐ろしいほど観る者のことを考えてモノづくりを行うと、ここまで人の感情や行動に影響を与えることができる。そして、ソフトウェアというプロダクトづくりをしている者として、自分にも恐ろしいほど使う者のことを考えているとどこかで言わしめたい思いがあることに気づく。自分の中にある生々しい感情に出会えたことが嬉しいし、翻って自分の仕事ぶりはどんなものなのかと焦りすら感じる。

違和感、恐れ、興奮、引きこまれ、嫉妬、焦り。日常を過ごしているだけでは味わえない、感情の行き来。まるで、ファンタジーを目にした子供のようだ。自分の中にある生々しく、熱い感情と向き合うために、この映画を何度も何度もみたいと私は思うのだろう。

 

最後に。音楽集も素晴らしいです。宇宙大戦争だけで、ご飯三杯いけます。伊福部さん、偉大です。

シン・ゴジラ音楽集

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