The Dragon Scroll

Be just and fear not.

現場はどこだ? 現場は、今、ここだ。

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このエントリーはDevLOVE Advent Calendar 2013 「現場」の9日目の記事になります。

自己紹介

改めまして市谷といいます。ソフトウェアの受託開発の仕事をしています。

現場はどこだ? 現場は、今、ここだ。

「このWBSを更新してあすの進捗会議に届けなければならない。」

 上司からのメールを読んで、氷を飲み込んだような冷たさを体に感じた。WBSの項目は気が遠くなるほどある。それを1つ1つ更新していく。大丈夫だ。状況は壁に貼ったタスクボードを見れば分かる。しかし、いかんせん数が多い。隣を見ればチームメンバーが2人3人まだ残ってタスクに挑んでいる。別のチームの島も覗いてみる。同僚のチームリーダーがじっとディスプレイを食い入るように見つめている。彼も同じ状況だ。時間は22時を回った。夜の高層ビルの窓際はたいそう冷える。ビルの玄関口が閉まってしまう前に、ホットコーヒーを買いにいこう。このEXCELとの格闘は間違いなく夜を徹することになるのだから。

 かつて自分が居たその現場のことを時々思い出す。もう5年も前になるが、割と鮮明に記憶に残っている。誰がそこに居て、何に憤り、どんな朝会で、何を皆で笑っていたか。決まって進捗会議の前の日は徹夜になった。結構無茶をしたし、怒りに身を任せて上司にかけあったことも何度かあった。プロジェクトとして順風満帆とは全く言えなかった。むしろ、あまりよくない方の記憶として記録されるべきプロジェクトだろう。

 だが、そのプロジェクトはここまでの10数年のキャリアの中で最も面白く、最も自分が学んだ時間だったとはっきりといえる。毎日が実験だった。試す、試す、試す。状況を好転するべく、知恵を絞る。自分一人だけではない。頼もしいチームメンバーと一緒に考える。顧客とも考える。顧客と開発チームという立ち位置を越えて、ミッションを共通に感じていた。当時はインセプションデッキなんてまだ無かったけども、われわれはなぜここにいるのか?きっと言えたと思う。

 私にとっての現場とは、誰かにとって必要なモノやコトを一緒に創る場だ。「誰かが分からない、役に立つかも分からないモノ」は作らない。システム作りなのだからと「開発側だけで作る」こともしない。自分たちには無いドメインの知識や経験を持っている相手と共に創る。目的が近くなるよう知恵を出し合いながら創る。相手はある問題を解決したいと考えている。こちらも相手に問題を解いてもらいたいと思っている。そのために必要な知識とスキルと経験を持ち寄って、創る。思えば現場とは、互いのWhyを実現するために、互いの持ち味を持ち寄る場なのだ。どちらかというとこれはまだ、理想だ。私はそうあるために、現場で仕事に向き合い続けている。

 最後に、ある私信も兼ねて。もし、仕事でミスしたり、クヨクヨすることがあったら、自分は誰の何のために仕事をしているのか思い出して欲しいんだ。それは、いつものクライアントの課題を解決して喜びを分かち合いためかもしれない。それは、憧れの上司を支えて組織を前進させるためかもしれない。あるいは、自分自身の学びや独り立ちのためかもしれない。その理由は実は何でも良い。その理由を他人の誰かがとやかくなんて言えやしないからだ。本当にそれが誰かのためになっているのなら、他人の言うことなんて聞かなくていい(立ち止まって考える機会は大事だよ)。自分が仕事をしているWhyを持ち、向かいたい先を見据えていれば、日常の悩みが些細なことに思えてくるはずだ。いや、むしろ囚われすぎてはいけないんだ。私はこう考えるようにしている。夜の間、世界は暗い。けれども。視線を上げれば、月が見える。私がこれからの生涯を含めて月に辿りつくことはないだろう。だが、それでいい。月が見えていればいい。そうすれば、向かいたい先を見失うことは決してないのだから。

次の現場は

上野さんです。