The Dragon Scroll

Be just and fear not.

デブサミからもらったものをデブサミに返してきました。

2010年のデブサミが、自分にとってこれまでと違うデブサミになりそうだと最初に考えたのは、DevLOVEコミュニティで97本の読書会を開いた時だった。

読書会後の懇親会で、この本の監修者であるyusukeさんに、デブサミで話してみないか」という誘いを受けた。私はその時、yusukeさんが冗談を言っているのだと思った。

そもそも、デブサミは私にとって特別なイベントであり、その特別な場所で私が壇上に立って、話すというのは、好きなプロ野球球団から、バッターボックスに立ってみないかと言われているのと同じことを意味した。

ところが、yusukeさんの次の一言が深く自分に突き刺さり、「デブサミで話す」ということがリアリティのある話として感じられるようになった。


「聞きに来る人が、たとえ10人でも1人でもいいではないか。何を考えているのか、少なくとも私は聞いてみたい。」


こんな嬉しい言葉を一体人生で何回もらえることだろう。この時のことは、忘れられない。
それからしばらくして、DevLOVE2009のことで頭も体も一杯になり始めた頃。 id:IWAKIRI さんに、正式にお話を頂いた。浜松町駅前のタリーズデブサミ2010のコンセプトを聞いた。聞いていて、また不思議な感覚に捉われた。

デブサミ2003(第1回)で、Very very youngだった私に「お前はまだ世界を知らん」と教えてくれたのが、ウルシステムズ漆原さんのセッションだった。その次の年、私は転職したのだ。
デブサミは、私にとって特別な場所だ。
デブサミのドンid:IWAKIRIさんは、私にとって特別な存在だ。
自分にそこで話す資格があるのか、私がごにょごにょしていると、id:IWAKIRI さんの隣に座っていた目つきの鋭い人が、鼻をすすり上げながら、言った。


「次は、君の番だ。」


角谷さんだった。


DevLOVE2009の準備、開催、さらに個人的なあれこれを躍起になって片付けている間に、デブサミまでの時間があっという間に無くなった。さらに、XP祭り関西(2/6)の準備もあって、かつてない追い詰められようだった。結構、辛いなと思い始めるタイミングにまるであわせたかのように、twitterでメッセージをくれたのが、なんと角谷さんだった。

発表内容と、発表資料とで、2回レビューしていただいた*1
発表3日前にようやく初稿を書き終えて、ボリュームはあるものの内容はまだ詰まっていない状況だった。2月18日が恐ろしくて仕方なかった、私に、角谷さんは言った。


「君の時間なんだから、君の話をしたらいい。」


私は、私の話をしよう、と思った。


角谷さんにレビューして頂いた帰りに、永和ビルを出ると粒の大きな雪が降っていたが、寒くは無かった。
血があつい鉄道ならば、走りぬけてゆく汽車は心臓を通る。


2月18日。
雅叙園のきらびやかなプレゼンルームの裏には、裏方の方が使う無愛想なコンクリートの通路がある。本番までの30分の時間、iPhoneを片手にひたすら練習した。コックさんがこっちを見ていたかもしれない。
壇上に上がる直前に、トラック委員の id:t-wada さんに、本名で呼ばれてドキっとした。そうか、本名で外で話すのは初めてのことだ。そう、この時間は、私のターンだ。



発表が終わるまで、恐ろしく早い時間が流れた。終わって、壇を降りたとき、岩切さんが居た。岩切さんの顔を見て、あぁ、私にも何か話が出来たんだなぁ、良かったと思った。
終わってから、友人たちの顔を見て、ほっとした。それまで、まるで、たった1人の世界に居たような気分だった。そう、私もエコシステムの一員なのだ。安心して、自分が信じるもののために、生きよう。


2007年のデブサミから始まった、私の時間はこのデブサミでひと区切りがつきました。この区切りの、最初と最後にいたのが、角谷さんでした。この間、さまざまな方に出会い、さまざまなものをもらいました(だから、返しに来たんだ、デブサミに)。
私の3年間に関わって下さった、全てのみなさま。本当にありがとうございました!そして、この先も!

*1:申し訳ないことに、毎回火曜日でasakusa.rbに2回も被せてしまった。今回の私の発表は、"監修 角谷信太郎"です。