The Dragon Scroll

Be just and fear not.

所属から提供へという「複業」の時代に、The Agile Guildというギルドを立ち上げました。

f:id:papanda0806:20180813112511j:plain

先日The Agile Guildという任意団体を立ち上げました。

theagileguild.org

詳しい有り様はこのサイトに書いているので、内容はそちらを見ていただくとして、そもそも「なぜこのような組織形態をはじめたのか」ということについて、ここでは触れておきたいと思います。

ただひたすらに、チームでありたい。

もともと、ギルドつまり、独立した個々人がある一定の利害で集合している団体の形成を考えたのは、4年前に遡ります。私が2014年に立ち上げたギルドワークスという会社は、その名前のとおりまさにこのような組織形態の形成を目指したものでした。

私自身、独立してやっていくにあたり、希望と圧倒的な心もとなさを感じました。いろいろと理詰めで考えるものの、最後は「ええい、やってやるよ」と思い切って、会社を立ち上げた次第です。「踏み出すと、何とかなるもんだ」ということは、踏み出した人にしか分からないものです。

現実どうやって仕事をつくり回していくか? お金がなくなったらどうしよう? など、不安なことはいくらでもあげることができます。そうした不安へのフォローが、4年前はもう少しあると踏み出しやすいのかもしれないなと思っていました。

そして、ギルドワークスを続ける過程で、当初に考えていたよりも、別の取り組むべき課題があることに気付きました。

どうにか自立できたとして、その後の世界には今まで当たり前のようにあった「チーム」という感覚が乏しくなってしまう。チームというあり方も、蛇口をひねればでてくる水のように、いつでも簡単に手に入るものではなかったんだ、ということに気づきます。リモートワークという働き方がさらに、「いままでの同席にあったチーム感」の消失を際立たせます。

これは当然といえば当然です。チームとは小さな組織のことです。組織で生きる道を捨てたのであれば、その概念を手放したということになります。自分自身のやり方やあり方を貫きたいと思い自立することを選んだわけですが、その一方で、チーム感まで捨てたいわけではなかったはずです。

一人でやるよりもチームならば、自分だけでは出来ない仕事にも取り組めます。そこには一人では得られない学びがあり、他者からのフィードバックがあり、自分の成長があります。チームならば、自分の不得意なことも他の人に補完してもらえる可能性がある。一人では実現できなかった成果もチームなら生み出すことができる。もちろん、仕事をつくることも、たった一人で取り組むより、チームであたれるなら実に心強い。

ギルドという組織形態をつくろうと考えたモチベーションはここにあります。お互いが独立しながら、それでいて、チームを形成できる枠組み。互いの独立性を保全するならば、一営利企業の元で枠組みを形成するよりも、枠組み自体に自立性を持たせるべきです。そこで、私はギルドワークスの外に、何らかの受け皿をつくることを考えました。最初の考えたのは「共同組合」でした。ギルドという概念から考えると至極自然に導き出されました。

日本には、ギルドに適した法人形態が無い。

ところが、組合も調べれば調べるほど、株式会社とあまり差がないことに気づきます。代表(理事)を置かないといけない、規程を置いて運用しないといけない、資産やPLの管理もしないといけない。これらは企業としては当然のあり様ですが、こういう世界観は、独立を選ぶ人とやはり合ってこない。ここにみんなで等しく時間を使おうということにはなりにくい。実際、組合を立ち上げようとやっきになっているのは仲間内で自分ひとりだけという状況に気が付き、断念しました。これが2017年の夏頃の話です。

当時の私は例えるならば、キャンプ場で「皆カレー好きでしょ、食べたいでしょ、火を起こすから手伝って、はい、薪置くの手伝って、はい、風おくるの手伝って」とやいのやいの言って動いているのだけど「誰もそこまでしてカレーを食べたいわけではなかった」ことに気づいてない感じ。果たして、カレーは人を引き寄せる美味しい匂いを放つ前に、完成しませんでした。

しばらく諦めていたのですが、ギルドという枠組みが不要になったわけではありません、いくつかの出来事を経て改めて立ち上げに向き直ります。日本の法人形態を隅から隅まで調べ直して、あることに気づきました。

「日本には、ギルドに適した法人形態が、無い。」

そう、無いんですよ。代表も置かなくていい、規程を置かなくてもいい、フラットな関係を形成維持できて、出来る限り面倒なことをやらなくても良い、あり方。 逆に規定外だからこそ、ギルドが必要なんだと思いました。規程に則って実現できるなら、誰でもやれますよね。

形態として規程できない形態。日本では「任意団体」しかないと判断しました。任意団体とは、いわゆる町内会とか、有志のサークル活動とか、そういう団体のジャンルです。当然法人ではないので、資産を持つことができません、契約もできません。でも、それは大した問題はありません。資産を持てなくても、お金が必要になることがでてきたら、会費を集めて精算すれば良いでしょう(まさに町内会費)。仕事には契約事が必要です。これも、基本的には、相手と本人が直接個別に結べば良いこと。1000人も2000人も運用するなら大変でしょうけど、仕事をプロジェクトという粒度でみれば、せいぜい5-6人程度です。もっと人数が多くなって、煩雑になるようなら、代表を立てて、契約構造を形成すれば良いでしょう。そう考えていくと「任意団体」で十分なことに気づけます。

Agile Guild Modelの適用

枠組みは良いとして、この不可思議な組織形態の運用はどうしたものかという課題もありました。これは、サイトにまとめているとおりagile guild modelという組織パターンを参考にしました。チーム、サークルまでならマトリックス組織と言えます。

f:id:papanda0806:20180813122658p:plain

f:id:papanda0806:20180813122713p:plain

そこにギルドという下敷きがあると三次元。

f:id:papanda0806:20180813122754p:plain

Spotifyなどの法人企業でやるならばここまでで良いでしょうけども、さらに、組織的活動をサポートする構造をコミッティ(委員会)という形で入れて、四次元。

f:id:papanda0806:20180813122739p:plain

実際のところ、初のプロジェクト、初のチームが立ち上がり、コミッティはギルドに参画したい方の応対と、このギルドの経済を回すためとで、実質2つ運用しています。コミッティの存在は必要不可欠です。ギルド全体は、月1回の定例を運用し始めています。まだ、サークル活動がついてきていませんが、しばらくギルドの運用が回るまでは、後回しかなというところ。

「所属」から「提供」という「複業」の時代

はじめてみて一つわかったことがあります。それは、思いのほか、フリーランスよりも副業で参画しようという方が多いこと。これは面白い発見でした。昼間は、これまでどおり法人企業で仕事をして、夜やその他の時間で別の仕事に取り組む。そういうあり方を許容する時代背景と、人の意識の変化があるのだと思います。

組織の中での仕事とは、役割による最適化が中心にあります。効率性を求めるならば当然のことです。ところが、そうあることでは対処できないような問題、事前の役割定義を越えた動きを取らないとたどり着けないところ、いわゆる越境が求められる局面が今ここでは増えてきているのではないでしょうか。

私は、越境自体の必要性と、思う存分に越境したい自分の思いから、独立する道を選びました。当然ですが、組織の基準の中では取れない行動が数多くあるからです (だから組織での働き方がダメというわけではありませんよ。選び方です)。

複業には、それまでメインだった仕事では得難い経験を手にできる可能性があります。越境できる機会というか、越境しないと仕事にならない状況に自分を置くことができます(そもそも複業自体が働き方として越境していますね)。

それまでの仕事のやり方が通じない、それだけだとツライですが、だからこそギルドでチームという枠組みが効いてくるのですね。ただし、仕事とは他者への貢献。値打ちが出せないと、成り立ちません。「自分は何でもって貢献するのか」という問いの下、何が提供できるか、というのは一つ前提にあります。ただ、所属していれば何となく何とかなるということは、越境した先の世界にはありません。

どういう人達でチームをつくるかは大事な観点になります。私達のつくったギルドには、変わった(リスペクトする言葉です!)人たちが既にいます。そうした人たちと、意味のある仕事をする、意味のあるプロダクトをともにつくる。私は、「つどう」ことと「つくる」ことで、人の営みを変えていく集まりにしたいと考えています。

The Agile Guildは社会実験

最後に、このギルドの立ち上げは社会実験だと考えています。事前に考える理屈は十分。あとは運用しながら、良い感じの状況を目指すのみ。ですから、何か正解があるわけでも、誰かが正解を持っているわけではありません。新しいあり方をつくる楽しみがここにはあります。このギルドの扉は誰でも叩けます。一緒に組めるかは、まず話し合って、お互いのことを知るところから始めましょう。参画をお待ちしています。

theagileguild.org

なお、TAGのイベントを下記のとおり開催します。

devlove.doorkeeper.jp

また、8月21日の夜、ギルドの全体定例も開催します。このタイミングにあうと、より合流しやすいと思います。もちろん定例は定期的に開催していきますし、参画表明はいつでも可能です。何らかの形で、TAGの活動を発信してまいります。