The Dragon Scroll

Be just and fear not.

あなたが開発しているプロダクトにストーリーはあるか。クリフハンガーに陥らないための作戦がここにある。

BNNさんから刊行される「ストーリーマッピングをはじめよう」という書籍のオビに推薦の言葉を添えさせて頂きました。

ストーリーマッピングをはじめよう

ストーリーマッピングをはじめよう

  • 作者: ドナ・リチョウ,高崎拓哉
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2016/12/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

BNNさんのサイトからはチラ見ができる。

目次

第1章|ストーリーマッピング
 「ドカン」と爆発させる
 ストーリーが大切な理由

第2章|ストーリーの仕組み
 ストーリーには構造がある
 物語のあるプロダクトを作る

第3章|コンセプトストーリー:第一印象づくりのために
 コンセプトストーリーとは何か
 コンセプトストーリーの仕組み
 平坦な展開は避ける
 物語を支える要件を見極める
 コンセプトストーリーをマッピングする
 ケーススタディ:Slack のコンセプトストーリー
 ケーススタディ:FitCounter のコンセプトストーリー

第4章|オリジンストーリー:ユーザーになってもらうために
 オリジンストーリーとは何か
 オリジンストーリーの仕組み
 オリジンストーリーをマッピングする
 ケーススタディ:Slack のオリジンストーリー
 ケーススタディ:FitCounter のオリジンストーリー

第5章|ユーセージストーリー:価値を体験してもらうために
 ユーセージストーリーとは何か
 ユーセージストーリーの仕組み
 ケーススタディTwitter のユーセージストーリー
 ユーセージストーリーをマッピングする
 物語のスケールを決める
 ケーススタディ:FitCounter のユーセージストーリー

第6章|ストーリーの発見とマッピング
 まずはユーザーの声を聞く
 スマイルテストを活用する
 測定を行う
 ケーススタディ:SmallLoans ―クリフハンガー活用の例
 イノベーションのポイントは「もし○○なら」
 コンセプトの叩き台となるストーリー

第7章|ストーリーの活用法
 戦略ツールを使ってストーリーを視覚化する
 ストーリーをつづる
 物語を使って行動する
 エレベーターピッチに活かす
 あらゆるものに物語を織り込む

第8章|ストーリーマッピングの大原則
 ストーリーはキャラクターが動かす
 キャラクターは目的が動かす
 目的は変わる
 目的は測定できなくてはならない
 衝突は悪いものとは限らない
 計算は楽しい
 きみならどうする?
 「ドカン」と来る瞬間を作り出す

ストーリーマッピングは、Jeff Pattonのユーザーストーリーマッピングとは別物だし、カスタマージャーニーマップとも違う。しかし、この本は両者のアウトラインをどう描くべきか、その指針を与えてくる。手ぶらで、理想的なユーザーストーリーマッピングやジャーニーマップを描こうとして、上手く描けなかった、ピリッとしなかった、という経験はないだろうか。丸腰で挑むには、ストーリーやジャーニーづくりというのは敷居が高い。

ストーリーマッピングでは、3種類のストーリーを定義している。

「Concept Story:プロダクトの全体像を表現するストーリー」

「Origin Story:潜在顧客がはじめて顧客になるまでのストーリー」

「Usage Story :プロダクトの利⽤体験ストーリー」

の3つのストーリーのことだ。それぞれで表現したい内容が異なる。3つのストーリーで表現する軸は「状況説明→事件や問題の発生→盛り上げ→危機→クライマックスと解決→落とし込み→エンティング」と共通する7項目(プロットポイント)であるが、それぞれのストーリーで中身が異なる。

例えば、Concept Storyにおける「盛り上げ」とは前段の事件や問題に対応する「プロダクト」にあたり、Origin Storyでは事件や問題に遭遇したユーザーがプロダクトと出会うための「チャネル」にあたる。これが、Usage Storyであれば盛り上げは目的を達成するために必要な「ステップ」にあたる。それぞれのストーリーによって、プロットポイントで検討すべき内容が異なる。

プロダクトの全体像を俯瞰するためには、何を考えるべきか。潜在顧客が顧客になるまでの流れを描くためには、何を考えるべきか。プロダクトの利用体験が滞りなく、ゴールまで達するかどうかをチェックするためには、何を考えるべきか。これらの観点は、ただストーリーを積み上げているだけでは、考えきれないものだ。ストーリーマッピングをプロダクト作りに取り入れる意義はここにある。

なお、クリフハンガーとは、ストーリーが繋がらず、途絶えてしまうことだ。崖で宙ぶらりになって、進むことも退くこともできない状況。ユーザー獲得のファネルや、プロダクト利用体験の流れの中で、どこか断絶があっては、プロダクト利用が広がることも深まることもない。こうした事態を迎える前に、ストーリーの構造を見立てて、手を打とうというのがストーリーマッピングの作戦だ。

私が、この本を読んでプロダクト作りで特に活用したいと思ったのは、この「構造のデザイン」という観点である。事実あるいは仮説を積み上げて、ストーリーマッピングやジャーニーマップを作っていると、間違いはなさそうであるが、何か物足りなさを感じることがしばしばある。「このプロダクトのならでは感(本書でいう「ドカン」と爆発するところ)」はどこで生じるのか。平坦ともいえる出来事の流れを追っていて、値打ちが見いだせるのか。

プロットポイントを軸に、ストーリーの構造を組み立てる時には、作り手の意思がそこに込められる、現れる。

「ユーザーはこういう問題を抱えているけども、問題が切実なほど代替手段をもっていて、一見解決しているようなんだけど、、、やはり不満があって、その不満を解決できる手段(私達のプロダクトだ!)と、これこれこういうチャネルで出会い、利用が進み、そして、、、ドカン!

優れたプロダクトには、優れたストーリーがあるのだと思う。ストーリーマッピングはそれを組み立てる手助けになるはずだ。