The Dragon Scroll

Be just and fear not.

アジャイルプラクティスは2回、奇跡を起こす。

東京に出てきて、初めて参加したXP祭り2006。
そもそも、私は、XPというのは、開発者の自己満足だと思っていた。
開発を楽しいものとしたいのは分かる。そうありたいと思う。
しかし、それだけでは何か置き去りにしてはいないかと感じていた。
最初、XP祭り2006は、私のその思いを拭い去るどころか
その疑念を助長させた。
流れるような関西弁を操る、fkinoさんの話を聞くまでは。
fkinoさんは、
「開発者が楽しいだけでは、XPごっご」、
そして「顧客重要」と言った。
この日、直接会話することはなかったが、fkinoという名前は
深く脳裏に刻まれることになった。
やがて、私は、XPJUGの門を叩くことになる。


2007年2月15日。
この日が、自分にとっては何の日だったか。
思えば、この日こそが、この日以降の自分の行動の原点となったんだ。
私の大切なデブサミを台無しにしてくれた、セッション、

実践『From Java to Ruby
〜 血があつい鉄道ならば/走りぬけてゆく汽車はいつかは心臓を通るだろう 〜

この朝一のセッション以降、全てのセッションが普通のセッションになってしまった。
自分が信じる道を、疑うことなく、突き進むその姿から熱量をもらった。
もちろんkakutaniさんである。
周りの気温が上がるのを待っているほど、自分の人生は長くはない。
私の熱量はやがて暴走し、社内デブサミを開くまでに至る。
身近な仲間と繋がり、刺激を与えあう「社内デブサミ」はいかにして生まれたか (1/4):EnterpriseZine(エンタープライズジン)


その後、暴走を続け、やがて仕事でも仕事以外でも疲弊した私が、
帰省する新幹線の中で読んだ本が、アジャイルラクティスだった。

アジャイルプラクティス 達人プログラマに学ぶ現場開発者の習慣

アジャイルプラクティス 達人プログラマに学ぶ現場開発者の習慣

達人プログラマーを駆け出しプログラマーの頃に読んで以来の
高揚感に襲われた。
アジャイルプラクティス 達人プログラマに学ぶ現場開発者の習慣 - papandaDiary - Be just and fear not.
この本を、日本の読者に送り出したのが、勿論ご存知のとおり
fkinoさんと、kakutaniさんである。
私は、帰省先から戻り、すぐに一本のメールをXPJUGに書いた。
アジャイルラクティスで、XPJUGユーザ会を開催する。
(2008.03.08) - 麦わら帽子の「記」
XP祭りに匹敵する人数が、このユーザ会に集まった。
このイベントが、そんなトリガーになっていたら、幸せだなぁ 〜XPJUGユーザ会#20〜 - papandaDiary - Be just and fear not.
70名の懇親会参加者を受け入れてくれた、村さ来の包容力も相当なものだが
アジャイルラクティスは、確実に一つの奇跡を起こしたんだ。


2008年6月21日、RubyKaigiがつくばで開催された。
その帰り道、id:libkazzとともに、開発の現場について話をした。
お互いが完全にかみ合ったのは、「開発は楽しい」ものだ、ということだった。
しかし、現実はどうだろう。
3K、7K、泥、デスマという言葉で現される現実が、
現場の仕事を酷く暗いものにしていく。
そもそも、開発をしないままの、若い子たちもいる。
場が無いならば、作るまで。
そして、現場開発者による、現場開発者のための、とっておきの本があることを
僕らは知っている。
もちろん、アジャイルラクティスだ。
社内に新しいコミュニティを立ち上げた。デブラブ(DevLOVE)というチームを立ち上げた。


大切なのは、「開発の楽しさ」だけではない。
現場の仕事は、より前進していかなければならない。
楽しさが、前に進む力を与えてくれる。
昨日よりも今日。今日よりも明日。進化し続けていくための源となる。
その前進が、顧客と、社会に新しい価値をもたらす原動力となる。
アジャイルラクティスの読書会は、弊社に留まることなく、
業界の他の現場をも巻き込み、最終章に向けて、ひた走ることになる。
この業界が変わるわけがないと、言う人はまだいるだろうか。 - papandaDiary - Be just and fear not.
僕らの手で現場を変えることは、できる。


2008年10月31日。
アジャイルラクティス読書会は、最終回を迎えた。
この読書会を開催すると最初に決めたときから考えていたことがある。
監訳者のfkinoさんとkakutaniさんを読書会に招くということだ。
お二人から快諾を頂いたときから、監訳者迎撃作戦は開始していたのだ。
アジャイルラクティスを読んでの思いを、各自、二人に伝える。
伝える手段は、もちろんライトニングトークスだ。
最終回は、あっという間に終わってしまった。
本当に、あっという間だった。
この回のために、二ヶ月前から準備を行ってきた。
3人目の運営の子が、ポスターを作り、オフィスの至るところに貼り出した。
id:libkazzが、最終回宣伝CMを作り、3人で社内食堂のモニタを
ジャックし、放映した。
参加者を募るために、沢山の人に声をかけた。
最終回の参加者は30名だった。


最終回を終え、懇親会の席で、お二人とゆっくり話すことができた。
fkinoさんは、書いた本人も忘れていたというのに、
私が書いたXP祭り2006のブログの内容を覚えていてくれた。
最も強く印象に残った人から、逆に、そのときのことを覚えてくれて
いたというのは、素直に嬉しかった。
fkinoさんとは、一度、「チーム」について、話をしてみたいと
思っている。
いつかのオブラブで、fkinoさんが発表していた、アジャイルなチームの話。
あの話があったから、私は、それを真似て実際にやってみようと思うことができた。
11月24日の関西アジャイルナイトに参加できない腹いせに
fkinoさんが、企画するXPイベントがとても楽しみだ。
お手伝いしますよ、fkinoさん。


kakutaniさんとは、"持ち場"の話をした。
自分たち一人一人が、"持ち場"を持っている。
それぞれが大切にするものは違うかもしれない。
それを大切にすることは、決して楽ではないはずだ。
それでも、自分が大切にするもののために、頑張る。
各自の"持ち場"でやり抜こうとする。
kakutaniさんは、言った。


各自、頑張れ。


各自、頑張れ。各自、頑張れ。
そして、時にコミュニティで会おう。


「角谷信太郎は、どこへ向かっているのか」
失礼を承知で、聞いた。
いまもなお、

血があつい鉄道ならば/走りぬけてゆく汽車はいつかは心臓を通るだろう

だという。あの時と向かう先は変わっていない。
あなたが、あの時と向かう先が変わっていないように、
あの時、あなたに熱病をかけられた、
私もまた、向かう先は変わっていない。


fkinoさん、kakutaniさん。
本当に、ありがとうございました。