The Dragon Scroll

Be just and fear not.

王様のスープ

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デブサミ2012のセッションランキングが公開された。

デブサミ2012アワード

 トップが角谷さん、2位がまつもとさん、3位平鍋さん、4位自分戦略、5位藤原さんのランキングになっている。また、満足度ランキングでは、6位に野村さんと一緒に作ったセッションがランクインしている。アワードの順位はセッション来場者数×来場者の評価で並べられたもの。今回の角谷さんのセッションの来場者数は、デブサミ10年で過去最高だったらしい。 この結果をみて、少しばかり感慨に浸ったのだった。私にも、先人が作ってきた大事なデブサミというスープを引き継いで、王様のスープとして煮立てることができたのだ、そう思うと込み上げるものは、少なくない。

 角谷さんは既にデブサミ2010で最終回を迎えていたので、最初から簡単には引き出せないと思っていた(これは平鍋さんも同じだ)。和田さんの援護射撃もあって、担ぎだすことに成功したのだけど、よく引き受けて頂けたなと思う。私がかつて衝撃を受けたように、多くの人にもう1度その機会を作りたい、なにしろ今回のデブサミは(10回目という)特別なデブサミなのだ。そういう御旗があったから出来たわけだが、私には角谷さん本人にも伝えていない、もう1つの思惑があった。角谷さんの話を同じ会社の人たちが聴ける機会を作りたいと思ったのだった。私には、それが必要なタイミングだと思えた。Agileな開発を突き進むならば、組織もまた自ずとAgileであるはずだ。上野の会社も変わりゆく過程の中にあり、そのために必要なことと感じたからこそ、私はどうしても願ったのだった。(個人的な思惑、かもしれない。だが、コンテンツ委員として果たすべきことを踏まえた上での思惑なのだ。許して欲しい)

 平鍋さんにオファーをした時は、既に参加募集も始まっていて、ぎりぎりのタイミングだった。おそらく多くの他の人と同様に、私も平鍋健児という人と出会ったからこそ、変わりえたと感じることをいくつも挙げることができる。平鍋健児はプロペラ帽を被ったHEROだ、今でも。ところが平鍋さんもデブサミを卒業して久しい。XPやPFという分野で馴染みのある平鍋さんの話を聴ける機会は減っている。一方で、毎年ソフトウェア開発を生業として、この領域の門戸を叩いてくる人が大勢いる。自分がかつて味わった体験を、これからの人たちにも届けたい、それが出来るのは平鍋健児本人しかいない。これが平鍋さんをデブサミに再び召喚した狙いだった。

 藤原大という男と出会った時のことを覚えていない。海岸沿いのServicerに入ることを決めて、よしおかさんと青物横丁で飲んだときかもしれない。その時の出会いがまさか今日にまでこんなカタチで続くとは思いも寄らなかった。私が海岸沿いから辞するとき、心残りだったのは、藤原大とともに仕事を成し得なかったことだ。それは会社を辞める、最後の日にも感じたことだった。藤原大と自分の共通点は3つある。同年齢であること、大阪出身であること、クレイジーであることだ。クレイジー、彼のその部分には、どうしようもなく惹かれる

 デブサミのオファーをする際は、2011年末にDevLOVEで話してもらうことが決まっていたため、ひどく迷った(私が彼の立場なら、もうちょっと考えてよって言うね)。しかし、彼の話を聴いた人はきっと分かると思うのだけど、彼の話にもまた彼にしか込められない凄味があるのだ。栄え、滅び、そしてまた芽吹いたアジャイルの話なんて他に誰が出来る?Z旗だぜ?

 やたら寒い江ノ島への道を、彼と歩いたときのことが忘れられない。どういうテーマにするか、相談しようといって出かけてみたものの、特に大した話もせず、江ノ島を往復したのだった。 ひょっとしたら彼は私にはめられたと思ったかもしれない。

 プレゼンに練習はつきものだ。せめてゴムのアヒルちゃんくらいの役割は果そうと、雪が降る中、藤原大に上野に来てもらい、話を聴かせてもらうことした。話を聴いて、かつて、自分がデブサミで話すときにこうやって話を聴いてもらったことがあったっけ、その時も雪が降っていたことを思い出した。

 かつて、石のスープだったデブサミは、多くの人が具材を持ち寄り王様のスープとなっていった。かつて、自分は石だと言い放った人に、王様の具材として戻ってきて頂いた。平鍋さんにも、藤原さんにもとても感謝している。また、もう1つ別のセッションを一緒に作って下さった野村さんにも感謝(この物語はまた改めて)。私には、このランキングが自分のことのように誇らしい。なんだ、当たり前じゃないか、お前が揃えたのはもともと王様の具材ばかりじゃないか、そう言われるかもしれない。だけどね、鍋に入らないとスープにはならないんだよ。